牧師さんのノート20:
「パソコンが点字を読む」




 私は矢板ホーリネス教会の牧師、田中敏信です。
今回は「パソコンが点字を読む」がテーマです。
「点字」という文字は、私のように目の見えない人が、指でさわって読む文字です。今回は、この「点字」をパソコンが読むという事を、書いてみます。

 「田中さんが使っているパソコンは、声が出るんですよね。まっまさかぁ、田中さんのパソコンには、点字を読むための指までついているんじゃあないでしょうね」
はい!お任せください。下の写真をどうぞ!

見開きの点字本の右ページの点字をなぞる指

 あっ。上の写真の「手」は、私です。
点字の本は、上のようにして、「紙の表面の点の出っ張り」を指で触って読むんです。
それでパソコン君はどうするかといいますと、次のように「イメージスキャナ」という機械を使って読みます。

スキャナのガラス面に置いた、点字が書かれた紙1枚

 こうして、スキャナを使って「点字の出っ張り」を「画像」にするんです。
そうです。画像になっていれば、パソコン君の得意な所です。以前このノートで「上手に本を読める?PC君」という記事を書きましたが、同じ仕組みが使えます。
画面の中の文字をパソコン君が「これは□△という文字だな」と判断して、「画像を文字列に変換」するんですね。
点字を読む場合も、同じです。「点字の出っ張りの画像を文字列に変換」するわけです。
そして変換し終わった文字列を、パソコン君が音声で読み上げてくれる…。

 点字をスキャナで読み取って、文字に変換して読み上げる。
この作業を自動的に行なうソフトがあります。次の画像は、私が使っているソフトの画面です。

点字読み取りソフトのウインドウ。左に読み取った点字、右に平仮名。

 どうですか。
画面の右側に出ている「ひらがな」ですが、「わたしわ」になっていますね。点字の書き方の決まりで「助詞の『は』は『わ』を使う」という決まりがあるんです。それで「わたしわ」になっています。パソコン君が間違ったのではありません。
また「きょーかいの」となっています。これも点字の書き方の決まりで、「きょうかい」ではなくて「きょーかい」と書くように決められています。
他にも何箇所か「おかしな仮名遣い」になっていますが、点字とひらがなの「書き方の違い」によるものです。

 さて、もう一つ。このソフトはすごいですよ。
上の画面の右側の「ひらがなの部分」を漢字かな混じり文に変換する機能があります。試してみましょう

漢字かな混じり文への変換結果
皆さんこんにちは。
私は田中敏信です。栃木県の
矢板市でキリスト教会の牧師をして
います。
今日は2007年7月11日です。
更新が遅れてしまった「牧師さんの脳と」の
ページで皆さんにご紹介するための
点字を書いています。
点字を文字に変換するこのソフトを
私は7_8年前から使っています。
「田中さんどうしてこんなソフトを
使うんですか。田中産は点字を指で
読めるんでしょう・・【
もちろん読めます。私は目が見えなく
なった中学1年のときから点字を
使っています。なぜパソコンで点字を
読ませるかと言うとーーすみません。紙が・・・

 ちょっと間違いがありますね。

  牧師さんの脳と →  牧師さんのノート
  田中産は →  田中さんは

の2箇所と、 【 → 」 ですね。
あっ、それから「、」が1箇所もありません。これは点字の書き方の決まりで、言葉と言葉を区切って書く事によって、「、」を省略できるんです。私が書いた点字に「、」が1箇所もないので、変換結果にも「、」がないんです。

 最後に、どうして私が「点字をパソコンで読み取るのか」です。
下の写真を見てください。

机の上に並べた点字の聖書と、活字の聖書。

 上の写真では、右端の小さな本が活字で印刷された聖書です。それを点字にしたのが、ズラーリと、点字本で合計32冊です。
点字は、文字の大きさが決まっています。小さくすると指で読めなくなりますからね。そうすると、紙も大きく、しかもページ数が多くなるんです。
私は牧師さんですから、毎週日曜日の朝行なわれる礼拝の時間に「聖書のお話」をしています。この「お話の原稿」を点字で作っているんです。
1回のお話の原稿が、全部で40ページくらい、厚さが2センチくらいになります。これを1年分とっておくと…。
まっ、かさばる点字をパソコンの中にしまって置く、という事なんですね。

 「田中さん、聖書のお話の原稿!読ませてください」
ですか。
コッホン。
教会に来てくださって、是非お聞きください。

 「うぅん。田中さんが、なぜパソコンに点字を読ませているのか、まだわかんなぁい」

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